ペンフレンド２
初めてのペンフレンドが終焉してから１年が過ぎた。
僕はカメラマンとして都内の出版社で相変わらず忙しく働いている。
春とは言え未だ肌寒さを感じる３月のある日の午後、取引先の広告代理店に勤める山木明美さんからペンフレンドの依頼を受けることになった。
『克彦さん、あたしのペンフレンドの女性が新潟にいるのですが、彼女が男性のペンフレンドを希望していて頼まれたのです。克彦さんなら身元がしっかりしていて安心なのでこうして頼んだ次第です』
『僕、忙しく飛び回っているからそんな暇ないです』
『あなたが快く承諾してくれたと云う手紙を相手に送ってしまったもので・・・お願い、この通りです』
『まいったなぁ ! そう拝まれては、むげに断る訳にもいかず取引先の看板娘の機嫌を損ねたら後が怖いからなぁ』
『じゃ〜、いいのね? あなたのプロフィール相手に送っておきますから』
そう言う訳で、またまたペンフレンドを引き受けるはめになってしまった。
はじめまして、内藤ゆかりです。
山木明美さんから、あなたを紹介してもらいました。
明美さんから聞いていると思いますが自己紹介したいと思います。
内藤ゆかり、１９○○年１２月２０日生まれの射手座です。
今は家事手伝いをしています。
本と音楽と自然が好きです。今、生け花を勉強中です。
人からは「おとなしい内藤さん」と思われがちですが親も認める食わせ物と自分では思っています。
でも、昔はすごくおとなしかったんです。友人には「ゆかりってこんな人間だったの」と意外に思われるんです。人間って一つの顔だけじゃないから・・・
最近は、友人も私がおとなしいだけの人間だとは思っていないみたいです。
私の住む町は新潟市から電車で３０分位の所にあります。
秋葉山と言う小さな山があって春は桜が綺麗です。桜が咲くのが楽しみです。
我が家の庭は、ツクシ、水仙、鈴蘭の芽が出てきました。
今は雪がすっかり消えましたが、今年の冬はわりと雪が降ったんですよ。
克彦さん、米は新潟コシヒカリですよ !
昨年、友達とディズニーランドに行きました。新潟駅から夜行高速バスだったからとてもハードでした。でもしっかり楽しみました。一緒の友達はその夜、人気アーティストのコンサートに行った強者です。
おかげで帰りのバスの中でずーと眠っていました。
冬の日本海は寒くて・・でも私はもう２年も海に行ってない・・新潟県って海も山もある県なんだよな・・・と思います。
夏は海、冬は山でスキーと云う人多いんじゃないかしら ? 私はスキーはしたことないです。新潟県民なのにね !
海を見に行くなら「シーサイドライン」がGoodですよ ! 眺めがとてもいいの !
私は、新潟が大好きなの。自然があって好きなんです。道ばたの小さな花でさえ可愛いと思うんです。
なんだか、ごちゃごちゃと書いてしまって・・・ごめんなさいね。
" これも何かの縁だと思うので、この手紙書いてます "
それでは、失礼します。 ３月３１日 内藤ゆかり
お手紙楽しく読ませてもらいました。
新潟県って海も山もあり自然に恵まれて良いところですね。
新潟には阿賀野川と信濃川という２つの大きな川がありますね。
東京というコンクリートジャングルにいるとそちらの自然が羨ましいです。
日本海に沈む雄大な夕日を見てみたいです。
ちょっと思いついたものを幾つか質問します。
１:手紙の中に書かれていた「シーサイドライン」から佐渡が良く見えるのですか ?
2:東京の桜は今、満開ですが、秋葉山の桜は咲きましたか?
3:白鳥の飛来地として有名な瓢湖は、あなたのところから近いのですか?
4:自分で自分の性格を自己診断するといかがですか ?
5:好きな本と音楽のジャンルを語ってください。
6:旅に出るとしたらどこへ行ってみたいですか ?
7:僕は犬が好きで我が家で健太という名の犬を飼ってますが、あなたはペットを何か飼われてますか?
なんか、一方的に質問責めになってしまいました。
では、お便り楽しみにしています。
４月５日 克彦
今日４月７日は、とても暖かい日です。春だなーって思います。
道を歩いていると花が咲いていて、とっても気持ちいいです。
昨日ウグイスの声を聞きました。
とても綺麗な声で思わず足を止めて聞いてしまいました。
秋葉山の桜はまだですが桜が咲くと山がピンクになってそれを眺めるのは最高です。
私の家から瓢湖はそんなに遠くありません。阿賀野川、信濃川は、いつも気にしていないのですが改めて考えるととても大きな川ですね。
シーサイドラインの事ですが、そこからは佐渡も見えます。
新潟はいいところです。自信をもってます。
本はわりとジャンルをかまわず読みます。なんでも・・かな?音楽はクラシックからJAポップスまで・・・・カラオケ好きなので歌える曲、R&Bなどシングルで買ったりして、わりと何でも聴いています。
私の性格ですが行動派まではいかないと思うけど私は本当の自分（それがどんな自分なのかはっきりしないけど）を判って欲しいとは思ってます。
そこそこではなくて、本当に判って欲しい?と思ってるのかも・・・（学はないけど心理学は好きです）
歌じゃないけど♪わかって・・ください♪とオチがつきました。ハハ・・・♪
アイドル系はカラオケで唄います。クラシックはヴァイオリン小品集、クライスラーは好きです。カノンやG線上のマリアも好きです。
音楽は私にとってまさに「音を楽しむ」なのです。（シャンソンもいいですよ!）
旅と云えば今年は一人旅をしようと思ってるんです。あまり遠いとお金がかかっちゃうから遠くは無理だけど近場で石川県・・でも自然がいっぱいの北海道がいいなぁ。外国ではスイスに行ってみたいな !
とりあえずは国内旅行にしましょう・・・パスポートもないし・・（涙）
今日は生け花の稽古のある日だったので余ったお花をもらって家で飾りました。前回のフリージアもまだあります。やっぱり花があるのは気分がいいです !
私の家のペットはミドリガメと金魚くらいです。私は犬も猫も好きです。
お花の先生の家にマーチという名の可愛い犬がいます。近所にサスケ、ラッキー、勇吉くんと言う犬とトラと言う猫がいます。
克彦さんの家の健太はどんな犬ですか?犬って可愛いですよね（犬はよく飼い主に似るって云うじゃない。よく飼い主を見てるんですね）
それでは、失礼します
４月７日 ゆかり
４月も早半ばを過ぎましたが、元気にお過ごしですか?
花の命は短くて・・とは云いますが東京の桜はすっかり散り葉桜になってしまいました。
そちらの水仙や鈴蘭も大きくなっているのでは?
手紙でウグイスのことが書かれていましたが僕も昨年５月に福島の安達太良山に行ったときに残雪の向こうの林から澄み渡る良い音色のウグイスの鳴き声が聞こえてきました。何だかほっとした気分になりました。
『道ばたの小さな花でさえ可愛い・・』と云ってましたが、あなたに見そめられたその小さな花はきっと幸せな花だと思います。
道ばたの名も知らぬ小さな花を慈しむその感性はとても素敵だと思います。どうかその感性をいつまでも持ち続けてください。
ところで、あなたの周りにはユニークな名の迷犬がいますね!勇吉くんには笑ってしまいましたよ。
うちの健太は♂で毛並みが黒い雑種の小型犬です。甘やかし過ぎたので自分が一番偉いと思い飼い主の云うことをあまりききません。遊び疲れると冷蔵庫の角氷を美味しそうに囓ってます。
ゆかりさんはカラオケ大好きなんですね。一度聴いてみたいです。きっとレパートリーも多いことでしょう。
今日は仕事で疲れて、今お腹の虫がグーグー鳴いてます。
誰か美味しいもの食べさせてくれ !
大変失礼しました。
それでは、お元気でお過ごしください。
４月１７日 克彦
早いものでもう４月２０日です。
もうすぐゴールデンウィークがやって来ますが私はどこも行く予定はないんですけど・・・・・
こちらの桜も、もうすぐ散ってしまうでしょう。山がピンクのティアラつけてるみたいで、あちこちの桜が風でひらひらと花びらを空に舞い上がらせてます。
平地の桜は、そろそろ終わりかな?風で舞い上がる桜の花はピンクの雪みたいです。
手紙で私の感性の事を書いて下さいましたが、なんとも、そんな「立派」なものでもないような気がしているのですが（本人は普通のつもりなんです）
今までそんな"誉め"などめったになかったもので恥ずかしいです。でも、嬉しいですけれど、えへへ・・・・
生け花は見る心得なんて私も、本当言えばよく分からないです。でも、花器そして花と向かい合ったときピンと張りつめる・・・みたいな感じで出来るだけ上手に活けてあげたいと思います。
今日から地元のデパートで花展をやってますので明日見に行くつもりです。
私、知り合いのコーヒーショップで週に２〜３回お手伝いをしています。
実は、今日もその店に手伝いに行って来ましたがアイスピックで左手刺してしまいました。
昨年にも一度同じことがあったので今回で２度目なんです。
私っておっちょこちょいなのかな?・・・あー、はずかしー !
そのコーヒーショップはアンティークぽい店で絵が沢山飾ってあるんです。
お店の常連客を集めて大昔のレコード「ＳＰレコードを楽しむ夕べ」なんてのもやってます。
アルゼンチンタンゴ、シャンソン、ジャズ、クラシックのＳＰレコード を聴くのも楽しいですよ。
でも、ＳＰレコードの催しがあるときは私はお手伝いなの。
私、学生時代漫画クラブで漫画描いてました。今はイラストや詩が好きです。
私、家事手伝いなわけですが料理の献立は母と義理の姉さんがやってくれるので少し楽してます。
でも、時々、献立を母と一緒に考えて私が作ったりします。
得意なものはお袋の味でしょうか。
それでは、また・・・・ ４月２１日 ゆかり
負傷お見舞い申し上げます!
左手の傷よくなりましたか ?
アイスピックって怖いですよ。
僕、昔観た映画「氷の微笑み」でヒロインがアイスピックで次々に殺人してましたことを想い出しました。
ところでデパートの花展で、あなたの作品は展示してあるのですか?
お手伝いしているコーヒーショップのお薦めは何ですか?
マスターはどんな人だろうか?
東京の夜空は明るすぎて星がよく見えないのですが、新潟の夜空は星が綺麗に見えるのではないですか?
東京では繁華街を女性が一人で歩くのは危険です。
男たちが直ぐナンパに誘ってきますので上京の際は気お付けて下さい。
そう言う僕も羊の皮を被った狼ですから十二分にお気を付けくだされ。
それでは、このへんで ４月２８日 克彦
左手の傷すっかりよくなりました。
私は人から見られている"おとなしい"ゆかりさんではなく実は"おっちょこちょい"のゆかりさんなのかもしれませんよ。
アイスピックの扱いには気をつけなくては・・・・
デパートの花展に行って来ました。
やっぱりどの作品も上手でした。私はまだ生け花は展示した事はないんです。まだ下手ですし・・・・へへ
もう少し上手になってからかな? でも、もしかすると秋の文化祭に出すかな ?
コーヒーショップのマスターは昔、教師をしていてお客から先生と呼ばれていて自分で客を選んじゃう変わった人です。
マスターが変わっているから店にくる人もみな個性の強い人ばかりです。
でも、みな、いい人ばかりなんで私は好きです。
ご質問のお薦めのコーヒーはいろんな豆をブレンドした「アンクルブブ」です。
私がブラックで飲んで美味しいと思えるコーヒーです。
私も星は好きです。もともと自然大好き人間だから・・・・・・・・
でも、今日はピーカンの晴れではないので晴れた日に星空を見てみようと思っています。
克彦さん、毎回違った珍しい記念切手を貼った封筒楽しませてもらっています。
花の切手とか綺麗ですね。私、花が好きだから楽しみです。
話しは変わりますが以前に大学生のＡ君に「君って騙されやすい人だね」と言われました。
私ってそんなに騙されやすそうなのかな? 人が良さそうなのかな ?
でも、人を騙すような事はしたくないから騙される方でいいのかな・・なんてね !
コーヒーショップで私の話を立ち聞きしたベートーベンさんと言うあだ名の年輩のお客が
「騙されるのはよくない。人を見る目を持って騙されないように」と言いました。
その通りなんですが人を見る目なんて・・私に持てるのかな ?
そうだ、アイスピックと男の人には気を付けなくては・・・
私は怒るとこわ〜いメリーさんの羊さんなのです。でも甘えん坊なんですよ。
天気の良い日には麦わら帽子に鎌持って草取りしてます。
背中に陽があたってなかなかいいですよ。
それでは、失礼します。 ５月６日 ゆかり
お元気ですか ?
前回の手紙に同封されていた漫画の挿し絵どうもありがとうございました。
さすが、元漫画クラブで腕を磨いただけあって上手です !
漫画は目が命と云いますが目を描くのは難しくないですか ?
描かれていた女性が、未だ見ぬ ゆかりさんをオーバーラップさせました。
次の手紙にはどんな漫画が描かれているか次回も楽しみです。
また詩が好きとのことで、是非あなたの書いた詩を読んでみたいです。
♪メリーさんの羊〜♪とルンルン気分で唄っていると怖い狼に食べられちゃいますよ。
怖い狼があなたを狙ってますよ!
手紙に書かれていた「人を見る目」ってほんとに難しいです。
心の目を養う鍛錬が必要かもね。
『目は真実を語る』と云いますから、真っ直ぐに相手の目を見ると真実を語っているかが判ると思います。
そろそろ、あなたの周りでも友達が結婚されているのではないですか?
近所の世話好きな叔母さんや親から縁談話を持ちかけられたりしませんか?
僕、縁起担ぐ癖があるんです。暦の仏滅、大安、三隣亡など気にするのです。
僕の好きな数字は１８なんです。何故かと云えば誕生日だからです。
ところで、もしも神様が３つの願い事を叶えてあげるよと云われたら何を望みますか?
なんだか、支離滅裂な内容になってしまいました。
それでは、また・・・・ ５月１０日 克彦
今日、新潟市のコーヒーショップにお手伝いに行って来ました。
帰ってきたら、ミッキーが描いてある記念切手の貼った手紙見つけ、可愛いと思いました。
今日は、ちょっとプンプンしてるんです。
５月１３日がＳＰレコードの夕べの催しの日で手伝いに行ったのですがマスターったらその店で最近バイトにきた男性のプレスリーさん（あだ名）に帰りに車で家まで送るように言ったんです。
夜だから気を遣ってくれるのは分かるのですが、今日初めて会ったばかりの見ず知らずの男性に車で送ってもらうなんて嫌なんです。
『私、電車で帰ります』と言いました。
それなのにマスターったら分かってもらえないんです。（涙）
女心わかんないのかな ? 帰りの電車に乗りながらプンプン怒ってたんです。
でも、家に帰ったら克彦さんの手紙が来ていたからとても嬉しかった。
それはそうと克彦さん１８日生まれなんですね。私と２日違いですね。
手紙に書いてある通り、友達がそろそろ結婚してます。
しかし、私の友人は、何故か独り者が多い。
友達の一人は『私は、まだ、ふらふらしてるよ・・』だそうです。
うちの母は変わっています。
一人で食べていけるなら結婚しない方がいいと言うのです。
実は、母には夢があったのです。叶わなかった夢を娘に・・・ってとこでしょうか。
それと、でもどりになっては困るのだそうです。変な母でしょう。
だって、『お前みたいな女でも良いって言う人がいなければ一人でいろ』とのことです。
生け花の先生は、結婚はした方がいいと言っています。
『一人だと淋しいわよ』と言ってます。しかし、私、世の男性にあまりもてません。
お喋りも下手ですし、甘ったれなんです。寂しがりやさんなんですよ。信じます ?
おとなしいみたいだけど この人 と思うとＧＯ→アタックしちゃいます。
アプローチ下手なんです。したがって失恋も・・・・（涙）
しかし、ここでめげちゃいけません。
ぐっと、こらえて、次へとＧＯ→アタックって感じかな。
近頃は、克彦さんの手紙とても楽しみにしています。
また、東京に行ってみたいですね。新潟もいいところですよ。
一度、日本海を見に来てみてはいかがですか。
いいところですよ、新潟は、ベリーＧｏｏｄです。
手紙に『次回も（漫画）楽しみです』と書いてあったので、何か描かなくてはと思ってます。
それと、３つの願い事かなえてあげるよと書いてあるのを読んで、想い出したのは・・・
う〜ん、 ３つ叶うなら やっぱり健康とお金と彼氏かな !? （笑）
そうだ、３つ叶うなら魔法使いになれば・・・なんでも叶う・・・なんてね。 へへ
つまんない事書いちゃった。
女はリアリスト、男はロマンチストなのでは !? ・・・
男の人って、いくつになっても少年みたいなところをもっているってゆうのかな。
女は歳とともにリアリストになっていくようです。でもロマンも忘れたくなていな !
それでは、失礼いたします。 ５月１４日 ゆかり
お元気ですか?
手紙に同封されているチューリップ畑の写真どこだと思いますか?
オランダ?いいえ・・・砺波?いいえ・・実は千葉県佐倉市印旛沼湖畔のチューリップ畑です。
写真は先月のものですが写真に写っている巨大な風車はリーフデと言う名の風車で羽根の直径が２７．５mもあるんです。
チューリップ祭りが開催されていてオランダ民族衣装を着た可愛い女性達が盛んにカメラのポーズを執っていました。
オランダ民族衣装姿のゆかりさんを想像しています。
『そんなふうにゴマ擦っても何も出ないよ』ですって!?
いいのです。自分だけのイメージの世界ですからね。
ところで、この前送った草花の種は大きく育つ手ますか?
前回の手紙に書かれていた、あなたの心境なんとなく分かる気がします。
『人を見る目』って難しいなぁ ! 強いて言えば心の目で見ることかもね。
詐欺師は幾らうまい言葉で話しかけても目が据わっていません。
あれこれ思案するより手っ取り早く好きな人を見つけて結婚することです。
あなたの友達の何人かは既に結婚して子供がいる人もいるでしょう。
そんな幸福そうな友達を見ると羨ましくなったり嫉妬したりしませんか?
いくつになっても男ってロマンチストなんです。女はリアリストだよと言う声が聞こえて来そう。
恥ずかしながら初めて書いたエッセイを同封しますので次回にでも感想聞かせてくれると嬉しいなぁ!
それでは、次回にご期待・・・・
５月１８日 克彦
東京は、もう暖かいでしょうか ?
新潟は暑かったり寒かったり肌寒いっていうのかなぁ天気がいまいちで温度差があって困っちゃいます。
前回、お恥ずかしいイラストを描いてしまいいやはや(^^;)克彦さんの書いたエッセイとっても気にいってます。
上手ですね。
私の書く文など言葉遊びみたいなもので、とっても変なのが多いのですよ。
恥ずかし〜いってようなものばかりで・・・何年か前『詩とメルヘン』などという雑誌を買っていました。
その中に『サトウハチローの世界』が特集されていてその中の『ちいさい秋みつけた』は大好きです。
それに比べたら私の詩なんて、とても恥ずかしいです。
でも上手に書きたいのではなく下手でも自分の言葉で書きたいって思ってます。
この前、山木明美さんから手紙が来ました。
私が一度、東京に行ってみたいと書いたら『どうぞ来て下さい』と返事くれました。
今年一人旅をするつもりでいましたがどうやら場所は東京になりそうです。
でも行きたい所はたくさんあるので困っちゃうんだけれど・・・・・
本当の事を言いますとオリジナルの詩は山のようにあるんです。
え〜と随分昔から書いているもので・・・ノート書きしたのをワープロに打ち込んだりしてます。
読みたい本があるので今度、新潟の図書館に行くつもりです。
本をたくさん読んだら少しは賢くなるかな !?
無理かな!?それでも私は図書館に行こう !! そう思うのであります。
ところで克彦さんの手紙に書かれていたように何故か私の周りが結婚ラッシュ、出産ラッシュ、
う−ん『お祝い』がタイヘン !
『結婚っていいよ。子供ってかわいいよ』と友達から言われます。
とっても美人でとってもいい人です。『しあわせ』を絵に描いたような人です。
しかし、『結婚した方がいいよ』と言われても何故かピンと来ない私。
でも、彼女を見ていると、ちょっと羨ましいなんて思ったりもします。
まぁ、『ないものねだり』かな!?
変な言い方だけれど、女の子が春しているって思うのです。
私も今年で○○歳だけれどどうみても２０歳くらいにしか見えない（本当かな?）ので少し春色・・とでもいいましょうか。春しょうなどと考えたりして、クリスマス女を過ぎたのにね。
（まだまだ次は、大晦日女が待っているなんてね ^ ^; ）
とりとめもない事ばかり書いてしまいました。まっこと失礼いたします。
最後に少し前に書いた詩を送ります。・・・はずかしいなぁ(^^;)
『無題１』
泣いている私を
やさしく 抱きしめて
髪をなでてくれた
『泣かないで』って
何度も・・何度も・・・
そんな やさしさをもつ
あなたは
私にとって 大切な 友達です
ありがとう・・・・
やさしさを ありがとう
『無題２』
桜の色に 染まる山の上
あわい うす桃色は
初めてつけた
口紅の色に似ていた
５月２１日 ゆかり
to be continued つづく
小説に登場する人物及び会社名はすべてフィクションです。
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デ パ ー ト 秋 物 語
後 編
『もしもし、こんな時間に誰 ?・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『起こしちゃったかしら・・うふ・・・あたしよ・・淳子。今夜なかなか眠れなくて・・・・いま女性の声が微かに聞こえた気がするけれど部屋に誰か居るの ?』
『居るよ・・・僕の後方を酔っぱらいの女連れがね。今日、社員送別会があってね、近くの居酒屋で零時過ぎまで呑んでいたんだ。今、歩いて帰る途中なんだ。道を走る車の音が聞こえるだろう。それと、会費八千円立て替えておいたからね』
克巳は、アパートのドアを静かに締めると駅方向へ淳子からの電話のやりとりをしながら歩いていた。
『そうだったの・・・それはご苦労様でした。明日の仕事に差し支えるから、早く帰って寝なさいよ』
翌日、克巳がいつものように出勤し現像機の始業点検をしていると玲子が彼の背中越しに声をかけた。
『おはようございます。昨日はご迷惑をおかけしてすいませんでした。鍵をお返しします。すっかり酔っていたせいか昨夜のこと覚えていないんです』
『かなり酔っていたから、そのまま帰すのが心配になってね、僕のアパートに泊まってもらったんだ。僕の方こそ、念願のカプセルホテルに泊まれて楽しかったよ』
『市川さんにすっかりご迷惑かけてしまったわ。それでは、お仕事頑張ってください』
玲子が戻っていくと石井先輩が彼女に元気な声をかけていた。
それから克巳のいる売場へやって来た。
『昨夜は、お疲れさま ! 市川君が参加してくれたから楽しかったよ。来週、ここの階のサービスセンターの人たちの親睦旅行があるのだけれど君も参加してくれる? 月曜の閉店後にバスで伊豆に行くんだ。立て続けの無理な出費要請で恐縮なんだけれど、会費は壱万五千円で、領収書を書くから会社に交際費として請求しておけば・・』
間もなく開店時間となり、各売場では従業員が整列してお客の出迎え準備をしていた。
今日は、この階にある丸越デパートレディースクラブ友の会の催しが行われる日で多数の女性客が次々とやって来た。
克巳は、いつもより多いお客の現像依頼フィルムを手際よく捌いていた。
克巳のいる隣りの信販会社のブースにサングラス姿の背の高い外国人男性がやって来た。
皆川所長が留守のため一人で応対に出た高橋智美に男は突然ナイフを突きつけ片言の日本語を叫んだ。
『マネー・・マネーよこせ ! 』
『きゃー !』
叫び声に各売場の従業員が駆けつけ騒然となった。
彼女がお金の入った紙袋を手渡すと男は急いで逃げていった。
彼女は急いで警察直結のボタンを押した。
克巳たち売場に居合わせた男たちは警備員と一緒に男を追いかけた。
買い物客たちは、ただならぬ雰囲気に騒然となっていた。
間もなく、克巳たちは男に追いつくと彼は男の長い足に夢中でタックルした。
彼は男と床でもみ合いとなり、そこへ警備員たちが警棒で男のナイフを払い除け掴まえた。
間もなく緊急通報を受けてやって来た警察官に男を引き渡した。
克巳は男ともみ合いになった時に腕に怪我をした。
幸い大した怪我ではなかったが直ぐに医務室で応急手当を受けた。
医務室で包帯を巻いてもらって自分の職場に戻ると、売場のみんなが心配して駆け寄ってきた。
高橋智美も心配そうに彼に話しかけた。
『怪我されたそうですが、大丈夫ですか? ご迷惑かけて申し訳ありません。それにしても市川さんてとても勇敢なんですね。私、あなたを見直しちゃった。皆川が戻ったらよく話しておきます。後ほど、うちの会社の本部から正式なお礼のご挨拶があると思います』
並木部長が笑顔で彼の元へやって来た。
『市川君、怪我の具合、大丈夫か ? それにしてもよくやったね。お手柄だ。私からもお礼云うよ』
克巳は、みんなの賞賛に頭を掻きながら照れていた。
嬉しかったのか、張り切って仕事に精を出していた。
親睦旅行の日がやって来た。
閉店後、地下二階サービスセンターの職場の人たち総勢三十八名がチャーターされたサロンバスに乗り一路、伊豆の修善寺温泉に向かった。
バスの中は、呑んだりカラオケしたりして賑やかに弾んでいた。
やがてバスは修善寺温泉の格式ある日本旅館に到着した。
建物は伝統ある純和風建築で各部屋から大きな池を挟んで能楽堂が見えていた。
克巳の部屋のメンバーには石井先輩と中村代理と皆川所長がいた。
克巳たちは部屋割りのメモを見ながら自分たちの部屋へ行って荷物を置き宿の浴衣に着替えると部屋の仲間と大浴場へ行き温泉で汗を流した後、宴会場に向かった。
間もなく並木部長の挨拶の後、宴会が始まった。
女性たちは男たちにビールをついでまわっていた。
やがてカラオケ大会となり喉に自信のある人たちがマイク片手に自慢の喉を披露していた。
宴会の途中で退席した男たちには、女性たちの部屋に遊びに出かけるグループもいた。
女性たちも密かに、男たちを誘っているようだった。
石井先輩が克巳に声をかけた。
『市川君、僕と一緒にあっちの部屋に行ってみないか?』
先輩の後について女性四人のいる部屋に入ると既に先客の男が二人いた。
『宍倉、高吉、ここにいたのか ! さすがお前達、手が早いな ! ここはとびきり上等な美人の集まった部屋だからな』
レディースクラブのチーフ小原幸恵が艶っぽい声で石井先輩と克巳に話しかけた。
『あら、いらっしゃ〜い ! これで男女仲良く四人ずつになったわね 』
克巳はその中に玲子の姿を捉えた。
ドアをノックする音が聞こえた。
ドアはロックされていたので後から来た男たちは諦めて次の女性部屋へ出かけていった。
ゲームをしたり、たわいもない話をした後、石井先輩が提案した。
『それぞれ気に入った相手とペアを組もうよ。僕は幸恵ちゃんを選ぼうと』
男たちはそれぞれの女のもとへ寄り添っていった。
克巳は、玲子の傍に寄り添った。
また、ドアをノックする音がした。
中村代理がぶつぶつ独り言を呟いていた。
『近頃の女たちは平気で男を部屋に呼び込んで部屋に鍵かけている。全くいい気なもんだ。不愉快極まる』
翌日一行は、シャボテン公園やワニ園、浄蓮滝、河津七滝などを見学した。
克巳は持参した愛用のカメラで行く先々でみんなの記念写真撮影をかってでた。
歩き疲れたのか、帰りのバスの車内は半数以上が寝込んで静かだった。
定休日を利用した一泊二日の伊豆の旅が終わった翌日は、いつも通りの仕事が待っていた。
克巳がいつも通り忙しく仕事をしていると内線電話が鳴った。
『交換台です。只今、外線とお繋ぎします。・・・・・・・・・・・・・・・・淳子です。会社の用事も兼ねて今からそちらに出かけるとこなんだけれど、お昼休みにちょっと逢ってくれる?』
『何だか知らないけれど、昼開けておくよ。それじゃ・・・・』
昼過ぎに淳子がやって来た。
会社の書類の入った袋を彼女から受け取ると彼は彼女を店外のレストランに案内した。
一緒に食事をしながら彼女の話に聞き入っていた。
『うちの会社、本業の方が不況による業績不振で今度の冬のボーナス大幅カットされるかもよ』
『厳しいなぁ ! 話はそれだけかい ?』
『それから・・・・・・・・・あたし、親の薦めで近々お見合いすることになったの』
『そうか・・・おめでとう ! いい人だといいなぁ。結婚が決まったらお祝い贈るよ、お幸せに ! 休み明けで仕事の量が多いから、これで失敬するよ』
淳子は彼の煮えきれない態度に思い切って最後の強い賭けに打って出て彼からの告白に熱い期待を寄せていただけに、今は落胆のあまり目を潤ませながら彼の後ろ姿を淋しく見送っていた。
彼は職場に戻ると忙しく働いていた。
そこへ、玲子がやって来た。
『お話したいことがあるので閉店後、私と付き合ってくれませんか?』
『それじゃ、その時間に通用口近くで待ってるよ』
退社後、彼は玲子と近くの居酒屋に出かけた。
『話って何 ?』
『私って、呪われた不幸な星のもとに生まれた魔女なんです。今まで私と付き合っていた男性は皆、死んでいるのです。私、辛いんです。あなたを死なせたくない。お願いします、どうか私を諦めて・・』
『玲子ちゃん、そんなの迷信さ。たまたま偶然が重なっただけだよ』
『克巳さん、あなたは本当の怖さが分かっていらっしゃらないのですわ。この世には科学では決して証明することの出来ない現象が厳然と存在するのです』
そう言うと玲子は急に席を立ち出ていってしまった。
翌日、玲子の姿が見えなかった。
翌々日も更に次の日も無断欠勤が続いていた。
克巳は、玲子と初めて出逢ったときの、気にかかっていた彼女の瞳の奥に隠されていた謎の意味を今 初めて理解した。
今、彼は玲子を心の底から愛していることを悟った。
そして、例え自分の身にどんな不幸が起きようとも不幸のジンクスに真っ向から挑戦し玲子を自分の元に取り戻したいと決心した。
つづく Copyright by かっちん
小説に登場する登場人物並びにデパート及び会社名はすべてフィクションです。
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